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学園を支配する悪役令息のはずなのに、天使のような平民にわからせられ続けています
学園を支配する悪役令息のはずなのに、天使のような平民にわからせられ続けています
Penulis: 悠・A・ロッサ

第1話 学園を支配する悪役令息、平民にわからせられる

last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-27 17:20:31

第1話 学園を支配する悪役令息、平民にわからせられる

 俺は、レオン・ヴァレンタイン。

 聖ルミナス魔導学園の支配者──いや、正確にはこの国の貴族たちが通う、異世界屈指の名門魔導学園を支配する「黒き獅子」と呼ばれてきた。

 侯爵家の嫡男として、学園の予算、人事、派閥、教師すらも俺の意向ひとつで動く。

 魔法演習の順番から食堂のメニューまで、俺が決める。

 それが当たり前だった。

 貴族であることにあぐらをかいていたわけじゃない。俺は誰よりも勉強し、誰よりも魔導を極め、誰よりも人を支配することに誇りを持ってきた。実力の伴わない権威など意味がない──だからこそ俺は、誰にも隙を見せず、いつも完璧であろうとしてきた。

 模擬戦では三年連続で主席。魔法理論の論文はすでに王立魔導学会に所蔵され、数十の貴族派閥が俺を中心に結びついている。

 笑われたことなど一度もない。

 膝をつかせてきたのは、他人のほうだ。

 なのに、黒髪の新入生──ハル・アマネが現れてから、胸の奥がざわついて仕方がない。彼は平民奨学生。ただの庶民のはずだったのに、あの笑顔ひとつで、俺が築いた支配を崩しつつある。教師たちは彼に好意的になり、女生徒たちは彼に夢中になり、貴族の息子たちですら彼の言葉に耳を傾ける。わずか一ヶ月で、学園の空気は半分、彼のものになってしまった。

 「天使」なんて呼ばれているが、俺には毒にしか見えない。……いや、本当は最初からわかっていた。あいつは毒だ。

 だからこそ、惹かれてしまう自分がいる。

 いや、そんなはずはない、気のせいだ――

 入学式の日、講堂のステージに立つハルを初めて見たとき、時間が止まった。

 俺が審査したわけでもないのに、平民の少年が学園に入ったというだけで腹立たしい知らせだった。

 だが、黒髪が光を弾き、透明な肌と笑顔がステンドグラスの光を浴びるその姿は、天使の降臨にしか見えなかった。

 胸の奥が、不本意に熱くなる。

 視線を外したいのに外せない。

 心臓がうるさくて、指先が痺れた。

(なんだ、この感覚は。苛立ちか、それとも──惹かれている?)

「音楽室に呼び出せ」

 俺はわざと冷たい声で命じた。

 脅して、ビビらせて、あの天使の笑顔とやらを大人しくさせる──そのつもりだった。

 本気で体を傷つける気はない。

 ただ、あの綺麗な顔からプライドだけを剥ぎ取ってやりたかった。

 それなのに──。

***

 旧校舎の音楽室。湿った木材の匂いが、埃とともに鼻腔にまとわりつく。

 窓から差し込む月光が、黒光りしたピアノの表面を鈍く照らしていた。

 俺はそのピアノにもたれ、肘をついたまま眺めている。

 部屋の中央では、平民の少年──ハル・アマネが、制服の襟を乱されながら立たされていた。

 サミュエルとギルが、そいつの腕と肩を押さえ込んでいる。

 ノアが襟をつかみ、顎を無理に引き上げさせた。

 白く細い喉が月光に浮かび上がるたび、胸の奥が妙にざわつく。

 ……ちっ、平民のくせに。なんだよ、このざわつきは。

「天使だと? 笑わせんな、ハル・アマネ」

 ノアが冷ややかに嗤う。声には、貴族らしい品格にまぎれた毒が滲んでいた。

「どこの下郎に尻尾振って、この学園に這い上がってきたんだ? その清純ぶった顔が涙で歪むとこ、じっくり味わってやりたいね」

 その言葉に反応するように、ハルの瞳がわずかに鋭く光る。

 けど、ノアの指が襟から首筋へと滑り、まるで高価な磁器でも試すみたいに、軽く圧をかける。

 ハルの華奢な肩が小さく跳ね、月光に照らされた肌の白さがいやに目につく。

「おや、ハル君」

 サミュエルが冷笑を浮かべた。

「平民にしては、ずいぶんと肌が滑らかだ。処女? それとも、誰かに可愛がられた後かな?」

 ギルがしゃがんで、ハルの顎を指で持ち上げる。

「抵抗しても無駄だよ」

 声音はねっとりと絡みつくようで、ぞっとするほど静かだった。

「こんな場所に迷い込んだ平民が、俺たちの遊び相手にならないわけがない。……どんな声で鳴くのか、試してみようか」

 俺は部屋の隅、古いピアノに肘を預けてその様子を眺める。

 口元には貴族らしい余裕の微笑を貼りつけているが、内心、ハルの顔立ちの良さと、震える喉元が引っかかって仕方ない。

「ふん、お前たち。ずいぶん楽しそうだな」

 一歩前に出て、ハルの顔を覗き込む。……近い。

 平民のくせに、その目の奥に何か、底が見えない気配がある。

 引きずり込まれそうな、得体の知れない何かが。

「この平民、確かに悪くはない体してるな。処女かどうかなんて……試してみりゃ、すぐ分かるだろ」

 軽薄な笑いを浮かべてみせたつもりだったが、声の端が掠れているのが、自分でもわかった。なんでだ。なんで、こいつから目が離せねぇ。

 ハルの唇が微かに動いた気がして、俺の指が無意識にそいつの顎に伸びそうになる。

「なぁ、ハル。薄汚い出自は忘れてさ……いい子にしてみろよ」

 囁くように言いながら、わずかに笑う。

「それとも──俺だけでいい、なんて言ってみるか?」

 冷たい皮肉のつもりだったのに、喉の奥が熱い。

 口にした言葉はたしかに冷ややかだった。けど、吐き出すたびに、自分の内側に熱がこもっていくのが分かる。

 くそ、何が平民だ。なんで俺が、こんな……。

 その瞬間だった。

 ハルがふわりと微笑んだ──と、思った刹那、いつのまにかサミュエルとギルの拘束を解いた腕が、俺の首筋に回され、強引に顔を引き寄せられた。

 そして、唇が触れた。

 軽いものじゃなかった。驚くほど、濃くて深くて、熱いキスだった。

 舌がすぐに割り込んできて、歯の裏を撫で、上顎をくすぐり、俺の舌を絡め取る。

 「──っ……」

 腰が抜けそうになる。目の奥が痺れ、頭が真っ白になる。

 ただ唇が重なるだけじゃない。内側をまさぐられて、息を奪われて、逃げ場を塞がれる。

 音が、する。ぴちゃっ、くちゅ……と、生々しい音が俺たちの口の間で鳴って、理性をじわじわと溶かしていく。

 俺は、たしかに今、口で犯されている。

 離されたときには、唇が火照って、呼吸がうまく整わなかった。

 肩で息をしながら、ハルを見返す。

 ハルは、うっすらと笑ったまま、自分の唇をぺろりと舐めた。

 それが、あまりにも淫靡で、背筋がぞわりと震える。

 「レオンくん……キス、下手なんだね」

 耳の奥で、爆ぜるような音がした。

 「……っ、ふざけんな……」

 思わず吐き捨てた俺の声は、完全に掠れていた。

 ハルは目を伏せ、いたずらっぽく笑ってから──わざと、俺の視線を外した。

 もう、興味を失ったみたいに。

 自分でもわかっていた。これは脅しだ。形だけだ。それを知っているのか、ハルは怯えず、笑っていた。その瞳は、獲物を狩る直前の獣のような残忍な光を持っていた。

「レオンくん、僕を脅して辱めようだなんて……悪い子だね?」

「レオン様、もう貴方に従う理由はありません」

 ギルまで目を伏せ、ハルに視線を送る。

 ノアが俺の襟を掴み、低く囁いた。

「すみません……レオン様。僕はもう、ハル様に逆らえない……」

「なっ……」

 頭が真っ白になった。俺が仕組んだはずの場面が、いつの間にか俺を追い詰める舞台に変わっている。部屋の中央に置かれた古びたピアノの上に、俺は押し倒されていた。冷たく滑らかなピアノの表面が背中に触れ、黒光りする木目が視界の端で揺れる。

 ハルが俺の顎をそっと掴んだ。

「君が僕をレイプするつもりだったなら、今度は僕が君を捕まえる番だよ」

 吐息が首筋を撫でるたび、さっきの香りが頭の奥を痺れさせる。逃げなきゃと思うのに、身体が言うことをきかない。

「君が本気じゃないのは、最初からわかってた」

 笑いながらそう言って、ハルは俺を見下ろした。

「でも、僕は本気だから」

 その声に、ぞわっと背筋をなぞる冷たい感覚が走る。喉が詰まり、呼吸すら浅くなる。

 サミュエルの指先が、まるで鉄環のように俺の手首を締めつける。ギルの膝が、俺の足首を押さえ込み、動きを奪う。もがこうとするたびに、身体の奥底で何かがきしむ。

「離せ……っ!」 

 声が裏返る。貴族らしい威厳なんて、どこにも残ってねぇ。

「離さないよ」 

 ハルが、静かに答えた。その声は、祈りにも似ていた。そして次の瞬間、冷たい指が俺の首筋をすべり、鎖骨のくぼみをなぞる。

 体温が奪われるような感覚と、逆に胸の奥に灯る灼熱。おかしい、これはおかしい。こんな平民に――。

「ねえ、レオン」

ハルが耳元で囁く。吐息が頬を撫でる。

「君のプライド、ほんとは僕に壊されたいんじゃないの?」

「……っ、ふざけるな」 

 言葉はそう吐き出したのに、喉の奥から洩れるのはひゅうっとした息。身体が勝手に、緊張と期待の狭間で小刻みに震える。

 サミュエルがわずかに体重を移動し、俺の腕がより深く押さえ込まれる。ギルは黙ったまま、俺の膝を外に開かせる。まるで舞台装置の一部みたいに、二人は完璧に俺を固定している。

「綺麗だよ、レオンくん」 

 ハルの手が、俺の胸元をなぞり、冷たく熱い軌跡を残す。

「貴族なのに、こんなに素直な肌をしている……可愛い」

 心臓が跳ねる。身体の奥で、理性が崩れる音がする。

「やめ……ろ……」 

 呟くような声が、口からこぼれる。けれど、もう自分でも、その声に力がこもっていないことが分かっていた。

 ハルが、微笑んだ。その笑みは、獲物を完全に自分の世界に引きずり込んだ者の笑みだった。

「怖がらなくていい。全部、僕が覚えておいてあげるから」

 そう言って、ハルは俺の顎を指で持ち上げた。サミュエルとギルは、何も言わない。ただ俺の腕と足を押さえたまま、微動だにしない。月光が、俺たちをまるで舞台のワンシーンみたいに照らしている。

 ……この瞬間、俺は理解した。俺は、もう狩る側ではない。ハルという名の獣の手のひらの上に、完全に転がされている。

 ハルの指先が俺の頬を撫で、顎をすくい上げる。その指は冷たいのに、なぜか奥底まで火をつける。耳元に、囁き声。

 「レオンくん、君は賢いよね。今、どういう状況か分かるでしょう?」

 言葉が喉に貼りつく。分かってる。サミュエルが手首を、ギルが足首を押さえ、俺の四肢はまるで十字に縫いつけられたみたいだ。ハルは俺の胸元をゆっくり撫で、指先で鎖骨をなぞる。寸止めの熱が、理性の表面をじわじわ溶かしていく。

「……やめろ、ハル……」 

 自分でも驚くほど弱い声が洩れる。ハルの笑みが深まる。

「やめてほしい? それとも、もっと?」

 俺の奥で、何かが崩れた音がした。プライドか、恐怖か、それとも別の何かか。

 ハルがすっと身を離し、ノアに視線を投げた。

「下を脱がせて」と、静かだが有無を言わさぬ口調で命じる。

 ノアは一瞬目を細め、唇の端に欲を滲ませた笑みを浮かべると、ゆっくりと俺のズボンに手を伸ばす。その指先が布を滑り落とすたび、俺の肌に冷たい空気が触れる。

「くそ、殺すぞ……!」

 低く唸るように声を上げ、握り潰した拳が震える。

 だが、手足は拘束されていて動かすことはできない。

 部屋にいる全員の視線が、まるで獲物を値踏みするように俺に絡みつく。ノアの目は特に鋭く、欲望と嘲りが混じった光を帯び、俺の剥き出しになった肌を這うように見つめる。ハルの視線は冷たく、どこか計算高く、俺の反応を観察しているようだ。

 ハルがポケットから小瓶を取り出した。淡い香りのする液体を、指にたっぷりと馴染ませる。その仕草だけが、唯一の優しさのように見えて、逆に胸の奥を締めつける。

「初めてなんだから、ちゃんと用意してあげないとね」

 そう言って、潤滑に濡れた指が、俺の奥へゆっくりと入り込む。押し広げられる感覚に、胃が締め付けられるような吐き気を覚える。

 気持ち悪いはずだ――こんな異物が身体に入ってくるなんて、耐え難いはずなのに。だが、指が内壁を擦り、優しく円を描くたび、身体が勝手にビクンと跳ねる。羞恥と快感の境目が溶け合い、頭の中が白く濁っていく。

 そして、ハルの指がさらに奥、感じたことのない一点に触れ、ゆっくりと撫で上げられた途端、目の前がちかちかと明滅する。電流のような衝撃が背筋を駆け抜け、意識が一瞬飛ぶような感覚に襲われる。

「や……め……っ、あっ……♡」

 奥の奥まで掻き回されるたび、身体が裏切るように熱を帯び、俺の意志とは無関係に反応してしまう。気持ち悪いはずが、どこかで抗えない甘さが広がっていく。

「嘘……だろ……俺が……こんな……っ」

 絞り出すような声が漏れる。

 片目から涙がひと筋、勝手にこぼれた。

 拭おうともしない。拭けなかった。

 屈辱で顔が焼ける。

 泣いていることにすら気づかないほど、悔しくて、惨めだった。

「あ……ん♡」

 さらに中をかき回されて、口から洩れた自分の声に、自分が一番驚いた。

「可愛い」 

 ハルが、確かにそう呟く。指で俺の頬を撫で、涙を舌で吸い取った。冷たい舌先が、頬を滑る感触に背筋が震える。

 サミュエルの手にわずかに力が入り、指先が震えている。ギルは一瞬だけ視線をそらし、でもすぐまた俺の身体へと視線を戻してきた。ノアにいたっては、唇をきつく噛みしめたまま、その目に──明確な“欲”が宿っていた。

「レオン、僕だけ見て。ほら、息を整えて……」 

 そう言いながら、ハルが俺の奥を優しく、しかし執拗に掻き回す。

 びくっ、びくん──

 身体が勝手に反応して、ピアノの縁に背中がきしむ。月光に晒された俺の裸の腰、そのすぐ脇を、サミュエルとギルが固く見つめている。

「……や、だ……っ、見んな……見るな……ッ」

 声は震えて、もはや懇願だった。けどハルの声は、優しいままだ。

「大丈夫。見せていいんだよ、君は綺麗だから」

 その言葉と同時に、指が俺の奥の一点を押し当て、擦り上げた。

「ひっ……あっ……♡ だ、め……っ、もう……」

 視界が白くはじけ、頭の奥で何かが砕ける。身体が勝手に震えて、腰が浮く。指だけで、頂点を越えさせられてしまった。

「……あっ……♡ は、る……っ……!」

 涙と声が同時にこぼれる。ハルが、俺の頬にもう一度唇を寄せ、今度は舌で涙を吸った。

「綺麗だよ、レオンくん。初めてで、こんなに素直に感じて……可愛い」

 サミュエルが唾を飲み、ギルが顔を背ける。ノアはまだ膝をつき、震えながら見ている。月光が、俺たちのすべてを照らし出していた。

 そして、ハルは少し離れて、ぺろりと自分の唇を舐めた。 

 その仕草はいやらしくも美しく、残酷なほど余裕を孕んでいた。

「ねえ、レオン……どうしてほしい? 入れてほしい?」

 囁くように問われたその言葉に、脳が一瞬焼き切れる。

「……っ、ふざけんな……っ」

 かろうじて声を絞り出すと、ハルがくすりと笑った。

「強情だね。──まだ楽しめそう」

 そして、あっさりと身体を引いた。 

 俺の中にあった熱が、ぽっかりと空気に晒され、涙と汗の匂いだけが残った。

 ハルの目には、まだ終わっていない愉悦が灯っていた。

***

 ──気づけば、気配はもうなかった。

 サミュエルも、ギルも、ノアも、そしてハルも、いつのまにか去っている。

 残されたのは、乱れた衣服と、冷えきった空気と、俺ひとりだけ。

 ……くそ、ぜってぇ許さねぇ。

 身体は震えてるのに、頭の奥で燃えてるのは、悔しさと、悔しさと──悔しさだ。

 絶対に、こいつに負けたままなんて、終わらせねぇ。

 それだけは、決めていた。

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